第28回(令和4年)あきの螢能 特集

日程:令和4年6月18日(土)

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あらすじとみどころ 能/殺生石

作者不明。玉藻ノ前伝説と那須野の殺生石の話を綴り合せて創作されたものです。歌舞伎や人形浄瑠璃にも、この能を原点にして、発展させた作品がいくつもあります。

玄翁という高僧(ワキ)が能力(アイ)をつれ奥州から都へ上る途中、下野国(栃木県)那須野ノ原まで来ると、飛ぶ鳥が一つの大きな石の上を通ると落ちるので、不審に思っていると、一人の里女(前シテ)が現れ、その石は殺生石という恐ろしい石だから近寄らないように止めます。玄翁がその由来を尋ねると、女は、むかし鳥羽院につかえていた玉藻ノ前が、実は化生の物であり、その正体が見顕わされ、この野に逃げたが退治されて、その亡魂が殺生石になったという話をしてくれます。そして実は自分がその石魂であると明かして石の中に隠れます。

〈中入〉
玄翁がその巨石に向かって仏事をなし引導を与えると、石は二つに割れ、中から野干(後シテ)が現れます。野干は天竺(インド)大唐(中国)の世を乱し、ついで日本へ渡って、我が国をも滅ぼそうと玉藻ノ前という美女に変じて宮中へ上がるが、安倍泰成の祈祷で都を追われ、この野に隠れ住んだが、狩り出されて射殺され、その執心が殺生石になったと語ります。そして今貴僧の供養を受けたので、以後、悪事はこないと誓って消え失せます。

切能ですが前段は三番目物的な風情があります。野干(狐)の化生で鳥羽院を悩ますというのですから妖艶さと凄みが漂ってしかるべきですが、毒気のある石に僧を近づけまいとし、かつての所業を悔いて成仏を願っているのですから、害心はありません。三国をまたにかけた稀有の妖怪を扱った鬼畜物としては、やさしく仕上がっています。後段の壮絶な狐狩りの再現は、詞章にあったキビキビとした所作の連続で、胸のすく思いがします。〈白頭〉になると、後シテは常は赤頭のところが白頭にかわり、型も替り、派手になり、目が離せません。

シーン説明 能/殺生石

一 高僧玄翁登場 -那須野ノ原-〈登場人物〉玄翁(ワキ) 能力(アイ)

玄翁は能力(従者)を引き連れ、奥州より都に上がる途中、那須野ノ原を通る。

二 里女の登場 -殺生石の謂れ-〈登場人物〉里女(前シテ) 玄翁 能力

大きな石の上を通る鳥が次々と落ちていくを見て玄翁が不思議に思っているところに里女が現れる。女は、その石の恐ろしい所以を語る。さらにその石魂が自分自身だと明かし、消える。
〈中入〉

三 能力(アイ)語る -玉藻の前の伝説-〈登場人物〉玄翁 能力

玄翁は能力に玉藻の前について知っていることを語らせる。天上界や天竺(インド)や大唐(中国)にも現れた狐の化身であり、宮廷から追われてこの地で射殺されて殺生石になったと語る。

四 玄翁石に向かって仏事を行う〈登場人物〉玄翁 能力

玄翁は狐の化身を成仏させるため、仏事を執り行う。

五 野干(狐の精霊)岩より現れて語り、消え失せる〈登場人物〉野干(後シテ) 玄翁 能力

石が割れ、野干が現れ壮絶な狐狩りの有様を自ら仕方話にて語る。そして今後は殺生はしないと誓い消え失せる。

あらすじ [仕舞]高砂

作者世阿弥。肥後国(熊本県)、阿蘇の宮の神主・友成は、都見物を思い立ち旅に出ます。途中播州高砂に立ち寄り、浦の景色を眺めていると、そこへ竹杷(熊手)と杉箒を持った老人夫婦がやって来て、松の木陰を掃き清めます。友成は、有名な高砂の松はどれかと尋ね、また高砂の松と住吉の松とは場所が離れているのに、なぜ相生の松と呼ばれるのかと、その理由を問いただします。老人は、この松こそ高砂の松であり、たとえ所をへだてていても夫婦のなかは心が通うものだ、現にこの姥は当所のところ、尉は住吉の者だといいます。そして老人たちは、さまざまな故事をひいて松のめでたさを語り、御代をことほぎます。やがて両人は、実は相生の松の精であることをあかし、住吉でお待ちしていると告げ、小舟に乗って沖の方へ消えてゆきます。
〈中入〉

友成は、土地の者から、再び相生の松のことを聞き、先程の老人夫婦の話をすると、それは奇特なことだから、早速自分の新造の舟に乗って住吉へ行くことを勧められます。そこで、友成たちも高砂の浦から舟で住吉へ急ぎます。住吉へ着くと、残雪が月光に映える頃、住吉明神が出現し、千秋万歳を祝って颯爽と舞います。

尚、本日は仕舞ですので、曲後半の住吉明神の寿ぎの舞の部分をご覧頂きます。